第57章 温もり
温かい気持ちに浸りながら、るみさんが淹れてくれた紅茶を飲むと、幸男さんは軽く咳払いをしながら照れくさそうに言葉を続けた。
「……もし…だな…話が早めに終わったら…一緒に…どこか…行かないか?」
「っ…!…部活は休みですけど…テスト期間ですよ?」
「べ…別にいいだろ…学力テストって成績に関係ねえし…余裕でこなせるから心配すんな…それとも嫌…か?」
「っ…嫌だなんて…じゃあ、もし早く終わったら……幸男さんのバスケしている姿が見たいです。」
幸男さんからのデートのお誘いに自然と頬が熱くなるのを感じ、チラッと幸男さんを見ると同様に顔が赤くなっている。
「そ…それならいつもっ…見てるだろっ…」
「…ダメ…ですか?」
「っ……いや…そうじゃねえけど…」
幸男さんは顔がどんどん真っ赤になっていき、私から視線を反らす。
顔が赤い幸男さんの後ろで、るみさんが部屋に静かに戻って来るのが見え、声をかけようとすると私に人差し指を立てる仕草を見せ、そっと幸男さんの後ろに立つ。
幸男さんは、るみさんの存在に全く気づかず、私の肩に手を置き抱き寄せると熱い眼差しで私を見つめる。
「聖知…今言うことじゃねえかもしれねえけど…キス…してもいいか?」
「っ…え…えっと…あの…」
「駄目に決まってるでしょ。」
「なっ…⁉︎っ…なっ…!母さんっ…いつから居たんだよっ…!」
私ではなく、るみさんが代わりに答え腕を組み仁王立ちで幸男さんを睨らみつける。
幸男さんは後ろから、るみさんの声がするとバッと私から手を離して、さっきよりもみるみる顔が真っ赤にトマトのように染まっていった。