第57章 温もり
「………?」
「母さん…さっきのとこ左だ。こっちじゃねえよ。」
「わかってるわよ。
でもこっちでいいから気にしないで♡」
マンションに向かってるはずが、だんだん遠ざかっている事に聖知は気づく。るみさんはウキウキしながら運転を続け、なぜか笠松家へと到着すると駐車場に車を停めた。
「ここ…家じゃねえかっ…!」
「そうよ?」
「そうよ…じゃねえよ…何考えてんだっ…」
「あら…ずいぶんと冷たいのね、今日みたいな日に聖知ちゃんを1人きりにするなんて私なら考えられないんだけど…」
「っ…!」
笠松は、親戚の家に泊まると聞いていたため、本来であれば今夜は聖知と2人っきりのはずだった。聖知の目の前で『冷たい男』と遠回しに言われ、既に泊まる予定だったと言うこともできずそれ以上何も言えなかった。
「あの…もう夜も遅いですし、私帰ります。」
「もう、聖知ちゃんまで…今から何か予定あるの?」
「な…ないですけど…流石にそこまで甘えられません。」
既に時刻は夜の21時を回っており、聖知が車から降りると笠松の母親も続けて車から降り、聖知を引き止める。