第57章 温もり
「聖知ちゃん…ずっと辛かったのね……その桐生さんって人のことは今でもやっぱり許せない?」
「………わかりません。」
私が全て話終わると、るみさんは手を優しく握ったまま優しく聞いてくれる。
私の突拍子もない突然の話をるみさんはすぐに信じてくれた。
るみさんの言葉に答えは出ず…再び考え込んでしまう。
許せないというよりも……信じる事ができない。
彼も私と同じ境遇で、どうしようもなかった状況だったっていうのはよくわかった。お祖母様をずっと憎み続けていることも…
だからこそ、私を利用して復讐に利用しているんじゃなかと思ってしまう。
全てを聞いて、桐生は敵じゃないとわかっていても、気持ちの整理がつかずに私は結論が出せずにいた。
「わからないのは…聖知ちゃん…貴女が言いたいことを言ってないからじゃないかしら…」
「…っ…!」
「っ…母さん…!」
「幸男は黙ってなさい。優しくすることだけが全てじゃないのよ。」
「…っ…」
るみさんに言われた言葉が胸に突き刺さる。
優しい口調で話してはいても、いつもよりも真剣なるみさんの表情で私を見るその目に何も言えなかった。