第57章 温もり
聖知はその場でうまく説明ができず、笠松の母の車で一緒にファミリーレストランで話すことになった。
でも…どう話をすればいいか迷っており、本当の事など話せるわけもなく、嘘をついてもすぐに見破られそうな雰囲気に自然と考えがまとまらず顔を俯かせた。
「それで、聖知ちゃん…何か悩んでいるの?」
「…っ…え…えっと…その…」
席に着くと、笠松の母親は優しい表情で、聖知の顔を覗き込むように問いかける。やはり、本当の話をする事ができず言葉に困っていると笠松がすかさず自分の母親を止めに入った。
「おい…母さん…無理に聞くことねえだろ…それに…なんでまたこの席の並びなんだよっ!」
「…だって幸也と幸大が聖知ちゃんの横がいいっていうんだもの。」
「少しは止めろよっ…」
「嫉妬はもういいから…話の腰を折らないで。」
動物園の時や笠松家で食事をした時同様、笠松の弟である幸大と幸也は聖知の腕に抱きついて甘えている姿に抗議をあげるが自身の母親に諌められる。
「お姉ちゃん……しんどいの?」
「これ…元気出るから食べて…」
「っ…」
聖知が深刻な表情ばかりしていると、無垢な子供にまで心配をかけてしまい、幸也はお子様ランチに付いていた好物のプリンを聖知にあげて不安げな表情で聖知を見つめる。
「……ありがとう。…心配かけてごめんね…でも…お姉ちゃんいまお腹いっぱいだから幸也くんが食べて…」
幼い子供にまで心配をかけてし心苦しくなり、幸大と幸也に優しく微笑みかけプリンを幸也に返す。こんな遅い時間まで付き合ってくれている事に誤魔化すのではなく、笠松の母親に話をすることを聖知は決心し、真剣な表情で笠松の母親を見つめた。