第57章 温もり
「なっ…!?…か…母さんっ…!?」
「幸男、貴方何してるの……私は女の子を泣かせるような男に育てた覚えはないわよ!」
「…は?」
笠松の母は2人を見つけ、声をかけようとした時聖知が泣いている姿を見てしまう。特に慌てもしない自分の息子を睨みつけ、腕を組み怒った表情を浮かべる。
「なんで俺が泣かした話になるんだよっ!」
「あの…違うんです。笠松先輩じゃなくて…」
「聖知ちゃん…気にしないで。ごめんなさいね…私がキツく叱っておくから…もう泣かないで…」
自身の母親が勘違いしていることに抗議の声を上げても笠松の母は聖知の話も聞かず優しく頭を撫でて大事そうに抱き寄せてハンカチを出して聖知の涙を拭う。
「人の話聞けよ!そもそもなんでココにいるんだよっ!しかも幸也たちまで連れてっ…」
「帰り道に幸男と聖知ちゃんぽい子といるのを見かけてデートしてるんじゃないかと思って引き返してきたの♡」
「引き返してきたの…じゃねーよ!大体今日はっ…親戚の家に行くって…」
「仕事が長引いたから急遽変更したの。…何?何か問題でもあるの?こんなに可愛い彼女泣かしてお母さんは許さないわよ!」
笠松は我慢できずに声を荒げると、母親が悪びれた様子もなく未だに勘違いして説教モードになっている様子に頭を抱える。
「っ…るみさん、本当に違うんですっ…笠松先輩は一緒に話を聞いてくれて…励ましてくれて…私がそれで感極まって泣いてしまっただけなんです。」
「……どういうこと…?」
「っ……それは……」
笠松が自分のせいで怒られている姿になんとか説明しないといけないと思い、聖知は笠松の母親に事の次第を説明しようとする。だが、詳細を聞かれると聖知は顔を逸らして口篭ってしまう。