第57章 温もり
「はぁ…もうこんな時間…すっかり遅くなっちゃったわね。」
暗い夜道の中、笠松の母は時計を見ながら自身の息子が待っている車へと急いで向かう。仕事の残業と忘れ物を取りに行って遅くなり、大きな紙袋を抱えて車へ乗り込んだ。
「お腹すいたー」
「ハンバーグ!ハンバーグが食べたい!」
「はいはい…わかったから。今日は外で済まさないといけないわね…まぁ…幸男も今日はいらないって言ってたし…」
2人の息子を宥めながら運転席へと座り、ファミリーレストランへと車を走らせる。
バスケで遅くなるのだろうと考えながら運転していると、自分の息子と聖知が住宅の路地で話をしている様子をすれ違い様に見かける。
「……今のって聖知ちゃん…?」
「お姉ちゃん?お姉ちゃんどこ!?」
「お姉ちゃん!お姉ちゃんと遊びたい!」
「まさか…2人でデートしてたってこと…?
もう…あの子は本当に何も言わないんだからっ!」
赤信号になり車が止まると、笠松の母は2人の事が気になり、路地へと曲がり2人を見かけた場所まで車を走らせる。
高校生のデートならもっと賑やかな場所に行く筈…遠くてしっかりとは見えなかったが話し込んでいる様子が気になり近くの駐車場へと車を停車した。