第57章 温もり
如月家の屋敷を出て、笠松も聖知も言葉を発さなかった。
お互い相手にどう声をかけたらいいかわからず、沈黙状態のまま夜道を歩いていく。
沈黙状態のまま歩いていると聖知は急に立ち止まる。
「…幸男さん…今日は本当に申し訳ありませんでした。話をするだけって言ってたのに…あんな…騙すような事…」
聖知は笠松に深々とお辞儀をして謝った。
夜遅い時間まで付き合わせてしまっただけではなく、不快な思いをたくさんさせてしまい申し訳ない気持ちでいっぱいで深々と頭を下げる。
「聖知…やめろ…謝る事じゃねえだろ。」
「でも…っ…」
すぐに笠松は聖知の謝る姿勢を止め、辛そうな表情を浮かべている聖知を見てそっと自分の胸板に抱き寄せる。
「覚えてるか?俺が言ったこと…俺は聖知の力になりたい、どんな事があっても離れないって言っただろ?…迷惑なんて思ってねえし…謝んな…」
「……はい…」
「今日はもう遅せえし、帰るぞ。」
聖知は笠松の言葉を聞いても気持ちは晴れず、手を引かれるまま帰り道を歩いていく。その間、笠松に対しての申し訳なさと桐生の事についてどう向き合ったらいいか深く考え込んでいた。