第56章 真実
私は如月家の全てを憎み今まで生きていた。
今まで通り…従順に行えばきっと自分の目的は成し遂げられる。
しかし……
お嬢様の幸せそうな顔が脳裏に焼きつきできなかった。きっとそれは、自分と境遇が一緒だからだ。突然人生を狂わされ…私は憎しみで生きることを選んだ。
お嬢様は違う。
誰かを恨み憎むのではなく、自分の足で歩き出し大切な想い人を見つけた。憎しみで生きてきた私とは違い、過去ではなく未来に目を向けている。
きっと…笠松様の事を報告したら私を恨み憎むだろう。
お嬢様には自分と同じような生き方はさせたくない。
過去の自分と重ね、そんな気持ちから私は初めて命令を無視し、お嬢様の恋を陰ながら支える事に決めた。
「…………」
「私の話は以上です。お嬢様には私の話は今すぐ信じていだだけないかと存じますが、これが真実です。何かご質問はありますか?」
「…聞きたいことがある。」
すべての話を終え、第一声を漏らしたのは笠松様だった。お嬢様はまだ頭の整理ができていないのか、複雑な心中を抱えたような表情を浮かべ顔を俯かせている。
「何でしょうか?」
「引っかかる点がある。本当に聖知の事を応援するつもりがあったんなら…この屋敷に来た時、モールでの出来事…聖知を憎まずにいたなら、なんであんな酷いことばっかり言った……矛盾してるだろ。」
私は笠松様の言葉にクスッと笑み、箍が外れたようにネクタイを外し嘲笑するように笑い出す。