第56章 真実
「その雛鳥は…自由になりたいから逃げたんなら、外の世界で自由に生きたらいいと俺は思いますけど。」
「……どうしてそう思うのですか?ずっと鳥籠の中で暮らしていたんですよ…?全悪の判別すらつかない、天敵にもすぐに捕まる可能性だってあります。」
お嬢様はまさに今がその状況…
どのような生活をしているかまでは知りませんが、1人でこの先ずっと生きていけるわけがない。
彼女を管理する者がいなければ…
「確かに…でも…籠の中でずっと何もしないより、外の世界で自由に生きる方が…楽しいし…幸せだと思いますけど…最初は、1人でも次第に仲間ができて籠の中よりも…外の世界で自由に生きる方が雛鳥にとっては…生きてるって実感を感じられるんじゃないかと…」
「…………」
生きている実感…?
人から全てを奪っておいて幸せになるのは許さない。お嬢様は…もっと苦しまなければいけない。
長年自分の人生を費やして苦しめてきた。その従順な行状を高く評価され今ではあの女の信頼を得るところまできた。
あの女の血筋の者は……
ポーカフェイスを崩さず拳をギュッと握りしめると爪がギリギリと皮膚に食い込む様を感じる。
笠松様から発せられた言葉に自身の中の復讐心が掻き立てられ、より黒い感情で頭がいっぱいになり、『この男をお嬢様から引き離さなければいけない』そう確信した。
ですがその時…笠松様から放たれた言葉にその思考がプツンと切れた。
「先生は雛鳥を閉じ込めるって言ってましたけど…それって…雛鳥の気持ちを無視してるんじゃないですか。雛鳥のことを考えるんなら…もっと自由にしてあげるべきだと…」
まるで頭から冷水をかけられたかのような衝撃を受け、すぐに笠松様の言葉に何も言い返すことができなかった。