第56章 真実
「どう思おうと自由だが……俺は特に何もしてない。」
「そうでしょうね。特に何かしていただいたわけではありませんから。」
小さく息を吐き、沈黙を破るように幸男さんは話し始めると、桐生はクスッと笑み話を進めていく。
「私は、お嬢様と笠松様が恋仲であることを知り、笠松様に近づきました。事実を調べて報告するなら…お嬢様を再び屋敷へ呼び戻すことができる。そう思っていました。しかし…あの時–––」
–––屋上
「今から話すことは心理テストみたいなものなので、軽く聞いてもらえればいいですから… 鳥籠の中にいる雛鳥についてです。』
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「笠松君は…この話を聞いて雛鳥が外の世界で生きることについてどう思いますか…?」
答えなど分かりきっている。
人間に飼い慣らされた動物は外では生きていけない。それはお嬢様も同じこと…長年幽閉されてきた人間が簡単に他者と関わりを持って生きていけるわけがない。
所詮恋仲と言っても…恋愛ごっこ。
あの女の冷酷な血を受け継いでいるお嬢様が愛されるわけがない。
しかし、彼から発せられたのは私の思いとは違う言葉だった。