第2章 笠松幸男
「あの…助けて…頂いて…ありがとう…ございます…」
痴漢を駅員に引き渡すと私は安心したのかホームのベンチに座り涙が溢れてきて泣きながら助けてくれた人にお礼を言った。
「いや……な…泣くなよ…」
「っ…ごめんなさい…」
「せ…責めてねえよ…これ…使えよ…」
涙が止まらずますます泣きだす私にハンカチを差し出してくれた。
「すいませんっ……」
「すいませんでした…ぁ…こんな時間まで…」
私は泣き続けてしばらくたち気持ちがやっと落ち着き彼に向き直り謝った。
「別にお前が悪いわけじゃねえだろ…」
「で…でも…あの…お礼させてください…」
「人助けにお礼は必要ねえよ。」
「そ…そうですか……」
その人は鞄を持ちベンチから立ちあがり軽く咳払いをして顔をそらしていた。
やっぱり…怒ってるのよね…こんなことに巻き込んで…
「な…名前…」
「え?」
「俺は笠松幸男だ。な…名前…教えろ。」
「…水瀬…聖知です。あの…」
「な…なんだよ…」
「笠松さん…まさか…海常高校の笠松さんですか?」