第56章 真実
「そうですよ。私がやってきたことは…笠松様のおっしゃる通り…お嬢様の尊厳を踏み躙った行為です。過ぎたことを謝り続けても…何も変わりません。都合がいいのはわかっています…ですが…どうか…最後まで話を聞いていただけないでしょうか…」
桐生は自分のやってきたことを言い訳するのでもなく、ただ事実を客観的に述べた。
言葉から悪く思っているのか…表情からは汲み取れずにいると幸男さんは唇を噛み締めて自身を落ち着かせるように、ゆっくり息を吐くと私に向き直る。
「聖知…俺はこれ以上…聞きたくない。聖知は……どうする?まだ聞きたいって思うなら…一緒に聞くが……少しでも嫌なら…帰る。」
「…………私は……聞きたい…です。…もちろん…今までの事を考えたら話を聞いても自分が辛い思いをするだけ…でも…あの時…保健室での時のことは本心で心配してくれたことだって…思いました。それに……ここで帰ったら…逃げてるみたいで…嫌です。」
「っ……!」
「幸男さんが…言ってくれました…どんな結果になっても…側にいてくれるって…だから…一緒に最後まで聞いてくれませんか…?」
幸男さんの様子を見ると、自身の苛立つ感情を抑えて私に優しく聞いてくれていることがよくわかる。
以前の私なら、すぐこの屋敷を出ていって問題から目を背けていた。でも…自分の過去に背を向けるのは終わりにしたい。きちんと向き合って桐生の話を最後まで聞くべきだと思った。