第56章 真実
この子供があの女にとって大事な物なら…
俺が受けた以上の苦痛を味あわせたい。
まだ物事がよくわかっていない少女の頭を撫でて現実を突きつけるように冷たい言葉を吐いた。
「私、うるさいガキは嫌いなので…
単刀直入に言いますね…?
…貴女はこの家から出れません。
大人しく従う方がお嬢様のためですよ
…痛いのは嫌でしょう…?」
厳しい言葉を浴びせると耐えれなくなったのかその少女は泣き出した。
自分が受けてきた苦しみをその少女にも味わってもらう。
当時、未成年だった私は狂った感情で6年間あの女と一緒に少女から自由に過ごす時間をなるべく削減させ、時には飴を与えるように優しく素振りを垣間見せ、途端に冷たく遇らう態度を続けていった。
アメリカにいる間は、その少女のことは道具としか見ておらず…日本へ来てからもそれは変わらなかった。
「……………」
桐生の話を聞いて言葉が出なかった。
時々桐生から悪意を感じる言葉をひしひしと感じていたが…自分は心底憎まれていたのだと…改めて現実を突きつけられたようで何も反応できなかった。
「…聖知…帰るぞ。
もう聞く必要なんかねえ…」
「……まだ話は終わっていませんが…?」
「逆恨みもいいとこだろ…
聖知には関係ない話だ。
話だけ聞けば…辛い…人生を送ってきたことは…わかった。
俺にはあんたの気持ちはわからねえ…
でもな…今まで聖知にしてきたことは…っ…
あんたを苦しめてきた奴と同じ事をしてるだろっ…!」
黙ったまま何も言わずにいると、幸男さんは私の手を引き立ち上がる。
幸男さんは険しい表情を浮かべ、桐生を睨みつけて感情的に言葉をぶつける。
幸男さんの言葉を聞くと、桐生は何か言葉を発さず…慌てる様子もなく、ゆっくり席から立ち上がった。