第56章 真実
地下の青い扉の部屋をノックをして入室すると乾いた音が室内に響く。
まだ幼い少女の頬が赤くなっているのを察するに目の前のこの女に打たれたようだ。
「桐生…今日から貴方が面倒を見なさい。」
「…かしこまりました。」
ふと目の前の少女を見ると、怯えた目で自分を見つめる。
目の前の少女を見てふと思い出した。
如月家のご息女には婚約者がいたが、駆け落ち同然で別の男と婚姻したと…
婚姻前には既に子を宿しており、1人娘がいると聞いた事がある。
そんな事を考えていると、あの女はそそくさに部屋を出ていき…少女と2人っきりになる。
「初めまして…私、桐生と申します…今日からお嬢様の専属執事としてお世話させていただきます。何なりとご命令を…」
目の前の子供を見て虫唾が走る。
挨拶をしても目を合わさず、何をそんなに怯えてるのか…わけがわからない。
自分の人生を壊したあの女の身内の1人。
情けなどかける必要もない。
目の前の少女に関心もなく、ただ事務的に世話をすればいい…そう思っていると少女は消え入りそうな声で小さく漏らした。
「ッ…家に…帰りたいッ…」
そう半泣き状態の少女に苛ついた。
全ての物を奪っておいてただグスグスっと泣いているだけの子供に…