第56章 真実
「今から9年前…お嬢様にお会いしたのが…
如月家に来て初めての日でした。」
「…っ…!」
桐生はゆっくりと自分の過去を話はじめた。
当時私は7歳…桐生は18歳…
桐生の話を聞いて少しだけわかった事がある。
形は違っているけど…あの屋敷に自分の意思など関係なく連れて来られたという事。
桐生の話を聞いて当時の記憶が蘇り、黙って私は耳を傾けた。
–––9年前
如月大財閥
乗っ取りに近い行為で全ての実権を支配された。
大きな力の前に父と母はなす術もなく姿を消した。
俺の道には2つの道がある。
如月家に従うか、逆らうか…
なぜ俺を如月家に入れたいのか理由がわからない。
俺には何も力がない。
逆らっても路頭に迷うだけだ。
全てを壊した財閥になぜ従わないといけないのか…
自問自答しても答えなんかでず…
言われるがまま俺は如月家の本家へと連れて来られた。
「これに着替えなさい。
着替え終わったら地下の青い扉の部屋に来なさい。」
如月家の当主 如月紅羽
全てを壊した張本人。
顔を見ずに用件だけ言われるとさっさと出ていってしまった。
「これ……
燕尾服か……?」
今日からこの家の使用人
まさか自分がこの仕事に就くなど未だに信じられない。
本当なら、今頃ドイツに入学して…
途中で思考をやめた。
考えても今は変わらない。
今はそれよりも…この家の内情を探るのが先だ。
あれだけのことをしたんだ。
この財閥には叩けば埃が出てくるはず。
そして…ゆくゆくは…この家を潰してやる。
だからまずは信用を得る。
そのためには手段は選ばない。
奪われると言うのがどんなに悲痛で悔しいことか…
教えてやる。
用意された服を身につけ、部屋に備え付けられている鏡の前に立つとほくそ笑み地下へと移動した。