第56章 真実
「私は…今では如月家に仕えている身ですが…
元々はお嬢様と同じある財閥の後継者でした。
将来を約束され…高校卒業にはドイツへ…
経営学を学ぶために留学する予定でした。」
「………」
「高校を卒業する少し前…突然それは起きました。
ある財閥に強制的に吸収合併を行使されました。
全ての決定権は…その財閥にへと移行され…
父と母は経営権を剥奪されました。」
「……その財閥って……」
桐生の言葉を聞いて驚いた。
自分と同じ立場で生活が一変してしまったのは共感できる部分があり、複雑な気持ちを抱きながら話を聞くと…嫌な予感がする。
桐生は復讐しようと如月家に入ったのなら……
子供でもわかる……
…乗っ取りに近い行為で…吸収合併したその財閥は……
「如月家です。
紅羽様がその首謀者です。」
「…………」
「高校を卒業してから、紅羽様は私の前に現れました。
急に雇用契約書を突きつけ問答無用に…
如月家に仕えるよう…命令をされました。
後から知った話ですが…
私を如月家に仕えさせる代わりに…
両親は海外で新生活をするための資金を…
援助してもらっていたようです。
簡単に言えば……両親はお金に目が眩んで…
私を見捨てたという事です。」
「……………」
桐生の言葉に何も言葉が出てこなかった。
自分の生活や…家族や人生を滅茶苦茶にされ…
その敵とも言える家に使用人として…
強制的に仕えないといけないなんて…
私も幸男さんも、桐生の言葉に何も返す事なく黙って話を聞くことしかできなかった。