第56章 真実
「……さて……本題に入る前に…
…笠松様…そろそろ…睨むのをやめていただけますか…」
「俺は信用してねえ…
味方ですって言って…すぐ信じられるわけねえだろ…」
桐生は私たちを応接室へ案内すると、紅茶のティーセットを持って戻ってくる。幸男さんは紅茶を淹れている桐生の行動をジッと睨みつけていた。
幸男さんが信じる事ができないのも当然だと思う。
話があると呼び出したにも関わらず、試すようなことをされて…味方だと言われても私自身も正直…信じられない。
「聖知…少しでも不快になったら言え…
すぐこの部屋から出る。」
「っ…はい…ありがとうございます…」
顔を俯かせていると、幸男さんは私の手を繋ぎ落ち込まないよう配慮してくれる。ゆっくり頷くと桐生のコホンっと咳払いが聞こえる。
「やれやれ…信頼は0どころか…マイナスに等しいですね。」
「私は正直…まだ信じられない。
今までのことを考えると…
何か…騙そうとしているんじゃないかって思ってしまう。」
「まぁ…そうでしょうね。
最初はお嬢様に対して悪意はありましたから。」
「…………」
「そうですね…ただ味方だと言っても…
信じてはもらえそうにないので…
順を追って話をしましょうか…」
悪意と聞くと不安な気持ちになり…幸男さんと繋いでる手に力が自然と入る。桐生は眼鏡を外すと、応接室に備えられている1人掛けの椅子へと座る。