第56章 真実
「っ…!」
ホール内にいきなり手を叩くような音が響くと、何処から聞こえてくるのか笠松は辺りを見渡す。
両階段にいる桐生と聖知を見つけると、さっきまで話をしていた女性がニッコリと微笑み同じように拍手を始め…ホール内から幾人かゾロゾロと人が集まる。
「……は…?
何だよこれ…」
「申し訳ありません。
少々…私の趣向で試させていただきました。」
笠松は状況が飲み込めずにいると、桐生は両階段から聖知と共に降りてくる。
桐生の口から全ては自分が仕組んだ話だということを、淡々とした説明を聞くと笠松はワナワナと怒りが込み上げ拳をギュッと強く握りしめる。
「っ…ふざけんじゃねえっ!!」
笠松の雷声のような怒鳴り声がホールに響く。
自分を騙したことに対しての怒りで怒鳴ったわけではなく…聖知に一部始終の会話を聞かせたことに対して怒りを爆発させていた。
「何で…そんなひでえ事ができんだよっ…
あんた…自分がどれだけ酷いことしているか…
自覚してんのかっ…!」
「っ…笠松先輩……
私の事は…大丈夫で…」
「良いわけねえよっ…!
俺が…信用できないって話は…
仕方がないって事だって…思ってる。
でも…だからと言って…
こんなやり方…どれだけ人の心を踏み躙ったら気が済むんだっ…」
何も知らない聖知に演技とはいえ…傷口を抉り出すような話を聞かせたことに対して笠松は怒鳴るように話をする。
笠松の言う通り…やり取りを見て、聖知自身も心が苦しく胸が痛んだのも事実だった。
聖知の声も笠松はすぐ遮り、目の前の桐生に対して不信感が募り、これ以上聖知を傷つけるような場所に居させたくないと思い、聖知の手を繋ぎ屋敷から出ようと出口に向かう。