第55章 証し
「昔みたいに、何でも言うこと聞くと思った?」
「いえ…私が持ってるリモコンを奪い取るくらいは…
予想はしていました。
まぁ…結果は変わりませんでしたが。」
「っ…そこをどいてっ…
笠松先輩に何するか知らないけど…
これ以上傷つけるようなことするならっ…!」
聖知よりもこの屋敷の事を知り尽くしている桐生には聖知が次どう動くのが手に取るように把握していた。
加えて身体能力も高く、勢い任せで行動しても絶対に通れそうにもない。
今更、話をしてすんなり通してもらえるはずはないとわかっていながらも聖知は桐生を睨みつける。
「では……
笠松様がお嬢様を見捨てたら…
どうしますか…?」
「……は…?
何言ってるの……?」
聖知は言っている意味がわからず、固まっていると桐生はホールの鍵を取り出し扉を解錠する。
「お嬢様…ここから先は私語や物音は厳禁です。
いいですね…?」
聖知に向き直ると桐生は人差し指を唇に当て一緒にホール内へと入っていく。
中へ入ると、ホールの2F部分に繋がっている入口で遠くで笠松と女性の話し声が聴こえる。話がヒートアップしているのか桐生と聖知がホール内にいることに気がついていない。