第55章 証し
「ホールにお連れするわけには参りませんので…
こちらからご覧ください。」
「…笠松先輩…!
……誰かと話をしてる…?」
窓に近づくと、笠松が女性と話をしているのが見える。
その女性は後ろ姿で聖知にはそれが誰かわからず、目を凝らしてみる。
そんな聖知の様子を見て、桐生は見兼ね部屋に隠している壁のスイッチを押すと大型のモニターが機械音を鳴らしながら天井から下りてくる。
「中の様子はここからご覧ください。」
ホール内の様子がモニターに映し出され、ちょうど笠松と女性が話している音声が部屋の響く。
『…あの……お邪魔してすいません…
俺は…』
『……笠松幸男…
害虫の1人ね。』
『っ…がっ…!
がい…ちゅう…?』
「っ…!!」
聖知はモニターを見ると、大好きな恋人が酷い言葉を浴びせられているのを見て、すぐに部屋を出ようとするが桐生に阻まれる。
「落ち着いてください。」
「落ち着けるわけないでしょ!
大体っ…あの女の人は誰っ!?
何で…あんな事っ…!」
無理に聖知が出て行こうとしても、桐生に腕を掴まれ部屋側に放られ扉に近づくことすら許されない。
幸男さんと話をしていたのは一体誰っ……
何で…っ…害虫って……
お祖母様の部下の1人ってこと……?
だとしたら…これを仕組んだ桐生はっ……
聖知の頭の中で色んな情報が入り混じり、困惑していると桐生が冷静に目を見据えて言葉を続ける。
「これは…お嬢様のためでもあるんですよ?
笠松様が本当にお嬢様の事を真剣に考えているのか…」
「…どういうこと…
さっきから…笠松先輩のことばかり…
何が言いたいの…」
桐生の考えがわからず、聖知は今すぐ笠松の元に飛んで行きたい気持ちでいっぱいで何とか部屋から抜け出せないか考えていた。
桐生はそんな聖知の目論みが分かっていたかのようにため息をつくと、燕尾服のポケットに忍ばせていたスイッチを押す。
ガシャンッ…ガシャンッ…ガシャンッ…
部屋の窓や扉に鉄格子が嵌め込まれ、桐生からスイッチを奪い返さないかぎり部屋から出れない状況に聖知は陥った。