第55章 証し
「お嬢様…無駄なことはおやめ下さい。
なぜ…そこまでなさるのですか?」
「笠松先輩を連れてきてって言ったのは…貴方でしょ…
話をするんじゃなかったのっ…!」
「……ええ…そうですよ。
ですが…笠松様はお嬢様が心から本当に…
信頼することができますか?」
「どういうこと……何が言いたいの…」
無理に屋敷に入ろうとする聖知を見て、桐生は驚く反面呆れていた。
あれほどこの家を嫌い、屋敷を出て行ってから少しも寄り付かなかった聖知に対し、ここまで変わったのは笠松の良い影響だと内心悟るが、桐生は目を伏せるとすぐに厳しい顔付きになる。
桐生は笠松と聖知が一時的とはいえ、別れてしまった時から笠松を疑っていた。
聖知から別れを切り出したとはいえ…簡単に別れを受け入れる笠松に失望し仲が再び戻ったとしても、桐生自身は笠松を許してはいなかった。
桐生の言葉の真意がわからず、聖知は困惑していると「ついてきてください」と桐生は告げ、ニコッと微笑み歩いていく。
「…………」
聖知は桐生について行こうか迷ったが、扉は開かずビクともせず…鍵を取られてしまった今、施錠されている扉を前に何もすることができない。
聖知は扉の方を振り向き、笠松を心配していたが…桐生の後へとついていき歩いていった。