第55章 証し
「っ…!」
「幸男さんっ…!?
幸男さんっ…大丈夫ですか!」
扉が閉まると聖知は急いで開けようとするが鍵がかかっていて開かず、扉をドンドン叩いても笠松の声は聞こえず不安が過る。
すぐにスカートのポケットからこの屋敷であろう古い鍵を取り出すと後ろから誰かに奪われる。
「っ…桐生…」
「…まだ持っていただけたようで何よりです。
ですが、少しお待ちください。」
「返してっ!
笠松先輩に何をするつもりなのっ…!」
「すぐにわかります。」
この屋敷の鍵
2度と聖知は使うこともないと思っていた。
屋敷を出て一人暮らしした時には何度捨ててしまおうと思ったかわからない。
そんな鍵を心底捨ててなくてよかったと思ったのも束の間、桐生に鍵を取られてしまった。
聖知の身長は160cm、反対に桐生は180cm。
鍵を取ろうとする聖知に対して、桐生が腕を上げれば届かない。
何を考えているのか全く分からず聖知は桐生を睨みつけていたが、中いる笠松の様子が気になり、桐生には構わず扉に体当たりする。
扉は音を立てるだけで、開きそうにもなく懸命に中に入ろうとする聖知を見て桐生はため息をつく。