第55章 証し
バタンッと扉が閉まる音が室内に響くと1人になり静寂に包まれる。
廊下にはまだ残っている生徒で溢れていて、扉を隔てて話し声が聞こえてくるが…黄瀬の耳には入ってこなかった。
俺にはできなかった
聖知っちをここに呼び出した時は本気で…
自分のモノにしようと思っていた
でも……聖知っちを前にすると…
できなかった
頭ではわかっていた
自分のモノにしても聖知っちは…
俺に振り向いてくれないって
自分の欲を満たすより…
聖知っちを悲しませる事はしたくなかった。
「っ……俺…
何やってんだか……っ…」
本棚を背に床に座り込み、心底自分の行動が愚かで最低な事なのか、冷静になった頭で今更ながら黄瀬は理解して自己嫌悪に陥っていた。
本当は…とっくにわかっている
聖知っちと笠松先輩の間に…
俺の入り込む隙はないって…
でも…認めたくなくて…
2人が一緒にいる邪魔を何度もした。
「……はぁ…
恋煩いで…振り回されるなんて…
情けないっスね……」
黄瀬は深いため息をついて天井を見上げる。
しばらく資料室で何をするのでもなく時間を潰し、聖知にもらった飴を口に入れ学校を出る。
この気持ちのまま家に帰って勉強する気力もなく、遠回して帰ろうと公園へ立ち寄る。
「そういや…
前も…公園に来たっスね…」
公園をブラブラ歩いていると屋上で聖知っちにフラれた時の事を思い出す。
あの時は…たしか…
黒子っちに会ったっスね……
もし…黒子っちが俺だったら…こういう時…
どうするんっスかね…
黄瀬は黒子に言われた事を思い出す。
慰めと言うより…
呆れられた方に近かったっスけど…
「……黄瀬くん…?」
「っ…黒子っち…⁉︎」
黄瀬が再び深いため息をつくと、後ろから聞き慣れた声がして振り向くと2号を連れた私服姿の黒子がいて、黄瀬は公園内に響くような大きな声を出し驚いた。