第55章 証し
「掃除は手伝えないけど…
コレ…あげる。」
「…飴っスか…?」
俺は聖知っちからレモンスカッシュ味の飴を貰った。
なんか…子供扱いっていうか……
掃除後のご褒美ってことっスよね…
「掃除終わったら食べて。
涼太…これに懲りたら…
勉強とか宿題、真面目にしないとダメだからね。」
「聖知っち……嘘ついてごめん。
…そうっスね…
もう…心配かけないっスよ。」
俺は苦笑いを浮かべもらった飴をポケットに直すと、聖知っちは俺を真剣に心配するような表情で見つめていた。
騙そうとした俺を本気で心配してくれる聖知っちを見て、罪悪感と一緒に自分の欲望に向かって行動しなかったことを心底安堵した。
「じゃあ、涼太…ごめんね。
また、月曜日に。」
「…聖知っち…問題集とテスト…
全部正解したら…
俺の話…聞いてくれないっスか?」
「………わかった。
勉強とテスト頑張ってね。」
聖知っちはスマホで時間を確認すると、慌てて内鍵を開けて部屋を出ようとしたのを俺は引き止める。
俺は…断られるかもしれない、呆れられるかもしれない、そんな気持ちが頭を過る。
でも聖知っちは、俺の気持ちとは裏腹に少し考え込むと嫌な顔は見せず、ゆっくり頷いてそのまま部屋を出ていった。