第55章 証し
瑛一の中で、そばに行きたい気持ちが強くなるが、首を横に振り欲求を葛藤していると聖知から信じられない言葉が放たれる。
「笠松先輩がなんでも親身になって…
いつも側で支えてくれているから…
心配しないで…」
「…は……?
いつも…側…だと……!?
おいっ…それはどういう意味だっ…!?」
「どういう意味って…?」
「やっぱり今すぐ行く!!
ぜってえ帰国する!!」
瑛一はさっき澄香と話していた事が脳裏に焼きつき顔を青ざめる。
いつも側って……まさか……
あいつ…泊まったりとかしてねえだろうなっ…
ぜってえ許さねえ!!
瑛一は再び荷造りするために自分の部屋へと向かおうとするが、澄香に首根っこを掴まれ阻止される。
「もうっ…
そういうところが暴走してるって言うの!」
「くっ…!」
「お母さん…大変だね……
でも…久しぶりに2人の声が聞けて嬉しかった。」
「聖知…今すぐは無理だけど…
もう少し待ってて…必ず婚約の件は破棄させるから。
その間つらい思いさせて、ごめんね…」
「ううん…お母さん…ありがとう…
私頑張ってみる。
お母さんも無理しないでね…」
電話越しでも2人の様子がわかり、聖知は2人の元気な声が聞けてホッと胸を撫で下ろす。
両親はアメリカに戻っても…日本に帰国して来てくれた時のように変わらない様子に安堵する。
婚約を破棄するなんて難しいに決まっている。
でも…婚約破棄できるよう両親が動いてくれている事がわかり、心強く感じ聖知は電話を切った。