第55章 証し
「それに…試合を投げ出して…
日本に帰国してきた貴方を…
聖知はどう思うかしら…
聖知なら…
仕事を投げ出してまできて欲しいって…
思わないんじゃない?」
「………チッ…」
澄香の言葉に何も言い返せず…瑛一は荷造りを止めて脱力し目を閉じる。
澄香の言っていることは正しい…
聖知なら間違いなく俺が試合を放り出して帰ってきたなんて知れたら確実に怒る。
……最悪嫌われるかも知れねえ……
「私だって本当はいますぐ帰って…
安心させてあげたい…
でも…そばで支えるだけでは何も変えられない…
今できることを実行して…もう2度と…
聖知に辛い思いはさせない…
瑛一さんだってそうでしょ?」
「あぁ……
はぁ……無力だな……俺は…」
澄香は心なしか涙腺が潤んでいるように瑛一には見えた。
拳をギュッと握り唇を噛み締めて泣かないよう我慢している仕草に瑛一は「俺はつくづく馬鹿だな」と自嘲的に笑う。
そうだよな………
辛い気持ちは俺よりも…
澄香が誰よりもわかっている。
澄香だって今すぐ飛んで帰りたいに決まっている。
それなのに俺は……