第55章 証し
–––ニューヨークside
「瑛一さん、少しは落ち着きなさいよ。」
「落ち着けるわけねえだろ。
このままほっといたら…
あのババアの目論見通りになる。
聖知を結婚させてたまるか。」
「今すぐの話じゃないから…
聖知は心配だから電話を掛けてきたのよ?
私たちが冷静にならないとダメでしょ?」
「俺は冷静だ。
いますぐ聖知のところに行く。」
澄香が電話を切ると、瑛一は自室で日本に行くための準備をしていた。
娘のためにすぐ行動を起こしてくれる姿勢に澄香は感謝しているが、今回は暴走気味の自分の夫にため息をつく。
何を言っても聞かない瑛一に澄香はあることを思いついた。
「じゃあ……日本に行ってどうするの?」
「それは………それは……ち…近くにいてだな…」
「近くにいてどうするの?」
「聖知を励ましたり…守ったりできるだろ…」
「それは、もう笠松君がやってくれてると思うわよ?
私たちが聖知のためにできるのは…
1日も早く婚約破棄をすること…
そうでしょ?」
「…………」
澄香からの問いに瑛一は思考が止まり、口ごもるように話をする。瑛一の返答をザックリと切り捨てるように話を進めると瑛一は黙ったまま考え込む。