第55章 証し
「…聖知はなんて答えたの?」
「…赤司君に断ったんだけど…まだ諦めてなくて…
1ヶ月後にまた改めて話すことになったの…」
「なるほど…
今のうちに外堀を埋めとこうって算段かしら…
大丈夫…そんなの無視してなさい。」
早すぎる……
いくら婚約の話が決まったからって…行動が早すぎる。赤司家の征十郎さんが動いてるってことは母が関与してる事は間違いない。
澄香は聖知に心配かけないよう元気づけ言葉を続ける。
「ごめんね…
今、婚約破棄するために動いてるんだけど…
もう少し時間がかかりそうなの…
でも、必ず結婚なんてさせないから…
赤司君が何を言ってきても、聞いちゃダメよ。」
「うん…ありがとう…お母さん…」
「それで…最近笠松く…」
「聖知!
今すぐ日本に向かう、待ってろ。」
聖知は、母である澄香の声にいつもの元気がないのを子供ながらに感じ取っていた。
自分のために動いてくれていることがわかり、安堵していると母の声に重ねるように父である瑛一の声が聞こえた。
「え…っ…お…お父さん…!?」
「ちょっ…!
瑛一さん!明日から試合だって言ってたでしょ!」
「試合ならどうにかなる!
娘のピンチに黙って聞いていられるか!」
「いいから、落ち着きなさいって!
聖知、ごめん!
お父さんが暴走してるから後でかけ直すわ!」
「…え…?」
電話越しにゴソゴソと物音がしたかと思うと、プチっと電話が切れ『ツーツー』と断続音が流れる。