第55章 証し
–––ニューヨーク AM7:50
セントラルパーク・タワー 最上階–––
「澄香、今日も出かけんのか?」
「……まだやることが山積みに残ってるから……」
「……ほどほどにしとけよ…
身体壊したら元も子もないだろ。」
「ふふっ…心配してくれるの?
私は、大丈夫よ…
例の話が思ったよりも、すんなり進まなくて…」
131階建ての超高層タワーマンション
その最上階
アンティーク調の家具や調度品で整えられた一室に上質な珈琲の香り高い匂いが広がる。
聖知の母である澄香は、瑛一の淹れたコーヒーを飲む。
普段すれ違いの多い2人だが、今日はお互いに時間が取れ落ち着いたモーニングタイムを過ごしていた。
娘の聖知との蟠りがなくなってからは…
夫婦間でも前より、張り詰めた雰囲気もなくなり良好なものになっていた。
「…聖知の婚約の話か…
クソっ…あのババア…
圧力はかなり厳しいのか?」
「そうね…
事を慎重に進めないと…すぐに握り潰されるし…
早く…安心させてやりたいんだけど…」
「…大体…結婚なんか早すぎるだろ……
聖知はまだ子供だ。
結婚できる歳でもねえのに…」
ダイニングテーブルをドンっと瑛一が叩くと、珈琲を淹れているカップに振動が伝わり水面が揺れる。
そんな瑛一の様子を見て澄香は内心『また始まった』と思いからかい半分で言葉を続ける。