第55章 証し
「ふふっ…そんなのあっという間よ?
どうする?笠松君が聖知と…
結婚したいって言ってきたら…」
「あ゛っ!?
許すわけねえだろ…
未来永劫…天地がひっくり返ろうが…
有り得ねえよ!」
「はぁ……
そう言うと思った。
笠松君と聖知の未来のためにも…
早くなんとかしないとね…」
瑛一は澄香の言葉に顔を青ざめたかと思うと、こめかみに青筋を立て珈琲が入っているカップが割れそうなくらい強く掴んで苛立つ。
そんな瑛一を見て澄香はため息をつく。
娘の聖知の話になると本当に周りが見えなくなる。
試合ではいつも冷静にゲームを運ぶ瑛一も聖知が絡むとまるで駄々を捏ねる子供のようだ。
「おいっ!
俺は…澄香が認めても絶対に許さねえからな!」
「はいはい…わかったわかった…
あ…電話…朝から……
あら…聖知からだわっ…!」
「ぶっ…!
な…何っ…!?」
瑛一の言葉を受け流すと澄香のスマホの着信音が部屋に鳴り響く。聖知からの電話だと聞くと瑛一は飲んでいた珈琲を吹き出しそうになる。
心を閉ざしていた聖知が自分から電話してくるのは初めての事で、澄香は安心感や幸せな気持ちに浸り着信ボタンを押した。