第55章 証し
「っ…幸男さん…ありがとうございます…
いつも…真剣に考えてくれて…」
「……そんなの当たり前だろ?」
「っ…幸男さんは…怖くないんですか?
何聞かれるかもわかりませんし…
正直…家の事情に深く巻き込んでしまっ…」
聖知は通学用カバンのハンドル部分をギュッと握りしめながら俯いていると笠松にギュッと抱きしめられる。
赤司の件があってから聖知の中で不安に駆られていた。
これからどうすべきなのかはもちろん…何より…
……笠松の事を気にかけていた。
祖母が決めた相手とはいえ…
自分の婚約者である赤司が笠松に『殺す』と告げたこと…
如月家の問題を話したことで…
これまで以上に迷惑をかけてしまうのではないか…
そんな不安な気持ちを吹き飛ばすように笠松は聖知を抱きしめたまま言葉を続ける。
「怖くないかって…聞かれると正直…こえーよ…
赤司は殺気丸出しだし…瑛一さんは怖えし…
桐生も変な奴だし…
聖知の家の話を聞いた時は最初は…
戸惑った……」
「……そう…ですよね……」
「でもな…
どんな家に住んでようが…環境がどうだろうが…
聖知は聖知だろ。
婚約者がいても関係ねえよ…
俺は、そのままの…っ…聖知が好きだ…
好きな女のために力になりたいって思うのは当然だろ…。
だから…迷惑だなんて思うなよ…」
「っ…幸男さん……
なんでも…わかっちゃうんですね…」
笠松の言葉が嬉しくて、瞳から溢れそうになる涙を零さないよう聖知は服にしがみつく。
「すぐ顔に出るからな…聖知は…
余計な事考えんな…」
笠松は聖知の頭をポンポンと撫でる。
笠松の言葉に聖知は不安な気持ちが氷が溶けるようになくなっていくのがわかる。
自分の考えている事をいつもわかっていてくれる…
きっと…明日も大丈夫…
幸男さんと一緒なら…
幸せな気持ちに包まれながら、どんなに大変な事があっても耐えられる聖知はそう信じていた。