第55章 証し
「お嬢様は、本当に馬鹿がつくくらい…
騙されやすいというか…いえ…
世間知らずですね…」
「……どういうこと…?」
「1度優しくされただけで…私を信じるのですか?
簡単に人を信じるとロクなことがありませんよ。
いくら性格の悪い私でも…
怪我をして、心を痛めているお嬢様に…
冷たい言葉なんて言えません。」
「じゃあ、笠松先輩との事を黙っているのはどうして?」
「…………」
桐生は手をパンパンと埃を払うように、呆れたように私を見ると小さな子供を諭すように話を進める。
その態度だけ見ると、私を馬鹿にしている様子に感じられていても、笠松先輩の話になると黙ったまま何も答えない。
なんで笠松先輩の話になると何も答えてくれないの?
一体、何を隠しているの…
私は桐生の態度を見て、自分の違和感は当たっていたと察し、もう一度話そうとすると、桐生はため息をつき、再び眼鏡をかけると屋上から出て行こうする。
「ちょっと、待って!
まだ話は……」
「話の続きがしたければ…
笠松様を連れてきてください。
その時にお話しましょう。
そうですね…明日の夜、如月家に来て下さい。
では。」
桐生は背を向けたまま自分の言いたいことだけ言うと、屋上から出ていく。
バタンと閉まる音だけが屋上に鳴り響き1人桐生の見たことのない態度に私は困惑した。