第55章 証し
「前にもお伝えしましたが…お忘れになりましたか?」
「はぐらかすような返答は求めてない。
私は貴方の本心が知りたいの。」
「本心……ですか。
お嬢様…何を考えているのですか?」
桐生は目を細め、顎に手を添え…私の様子がいつもと違うことに険しい表情を浮かべる。
「……わからなくなったの。
私は貴方が嫌いだった…
お祖母様と…一緒に自由を奪ってきた1人だから…
でも…この間…私が怪我した時…
側にいてくれて…優しく気遣ってくれた…」
「………」
「この9年間…1度もそんな素振りすらなかったのに…
なんで……どうしてなの……」
桐生は私の言葉を黙って聞き、小さくため息をつくと私にゆっくり近づく。険しい表情からふわっとしたよう笑みを浮かべ…右手の中指と親指を丸め私の額にかざすと思いっきりおでこをピンと指で弾かれる。
「っい…っ…!
痛っ…いきなり何すっ…」
「寝ぼけてらっしゃるようなので…
目も覚まして差し上げようと思っただけですよ。」
弾かれた額を抑え、だんだんズキズキと増してくるの痛みに耐えながら恨めしそうに桐生を見ると。悪びれた様子もなくこの状況を楽しんでいるように見える。