第55章 証し
「今日はここまでです。
…水瀬さん…
専攻授業の件でお話があります。
放課後、職員室に来てください。」
「……はい。」
授業が終わると、桐生は愛想笑いの笑顔で私に職員室に来るよう伝える。クラスメイトの生徒はそんな桐生の笑顔に騙されていたが、目が少しも笑っておらずその様子から不機嫌さを感じる。
大方、授業中ずっと桐生を見つめながら授業を聞いている様子に不満を持っているといったところかな…
教室を出る直前桐生は私に視線を映し、人差し指を上に向け合図を送ってくる。
「(屋上に来いってこと…?)」
放課後部活に遅れることを伝えてから、屋上へと向かうと既に桐生は屋上待っており、私を見るとすぐにイミテーションの眼鏡を外す。
「お久しぶりですね。お嬢様。
さぞ、私がいない間…
ゆっくり学園生活を過ごせたのではないですか?」
「………」
「そういえば…
私がいない間に笠松様と仲直りされたそうですね?」
「…………」
「……お嬢様…?
なぜずっと黙ってるんですか?」
いつもの私なら桐生の憎まれ口に我慢できずに言い返している。
桐生も私が黙っている様子に目を細め、いつもの私と違うのを察しているようだった。