第55章 証し
「テストなんかいらないっスよ。
俺は…それよりも聖知っちと…」
「っ…!
ちょ…涼太っ…離してっ…」
「嫌っス。
だって笠松先輩がいない今が…チャっ…!
Σっ…いったぁっ…!」
突然黄瀬の頭に何かが飛んでくる。
チョークの粉がついている黒板消しが頭に当たり涙目で飛んできた教壇の方向を見ると桐生がニコニコ微笑みながらそっと2人に近づく。
「おや…黄瀬くん。
大丈夫ですか?
ちょっと手が滑ってしまったみたいです。」
「っ…先生…
そんな都合よく頭に当たるもんっスか…?」
「偶然って怖いですね。
それより授業始まるので席に座ってくださいね?」
「………」
桐生が言い終わるのと同時に予鈴がなり、5限目の授業が始まる。
聖知は約1週間ぶりに桐生を見ていつもと変わらない様子にため息をつく。
改めて桐生を見るとふと聖知の中で不可解な点が出てくる。
なぜ桐生は如月家に仕えているのか。
小さい頃は考えもしなかったが、聖知が屋敷に無理やり連れてこられた頃から既に桐生は如月家にいた。
聖知の桐生に対する今の印象は…
『祖母と一緒に自分から自由を奪った男』
そう思っていた…
聖知は自分の中の疑念が本当に正しいのか…
それを少しでも確信に繋げようと思い、授業中いつも以上に桐生の行動を観察し見つめていた。