第54章 協力者
「……いった…!」
「っ…痛えなっ!
黄瀬…お前何やってんだっ…」
「笠松先輩こそ…
盗み聞きするつもりっすか…」
聖知が監督に呼ばれるのを横目で笠松は見る。
大体の話の内容は察していたが、何を話ししているのか気になり2人が移動した付近の体育館の入り口付近に来ると黄瀬と頭を打ちお互いに頭を抑える。
「(早く教室に帰れよ…
勉強しろって監督に言われたばかりだろっ…。)」
「(聖知っちと…
2人っきりで一緒に帰るっす。
マンツーマンで教えてもらわないと…
できないっすよ…)」
「(お前っ…いい加減にっ…)」
「水瀬、1つ確認しておきたいことがある。」
黄瀬と笠松が言い争う中、監督の声が聞こえると2人は静かに聞き耳を立てる。
「何でしょうか?」
「洛山の引き抜きの話だ。
今のうちに水瀬の気持ちを聞いておこうと思ってな。」
「(やっぱ、その話か…)」
「(聖知っち…)」
「(聖知ちゃんがいなくなるなんて…
考えられないな…)
「(森山っ…何でお前まで当然のようにいるんだよっ…)」
「(そりゃ、気になるだろ…
俺の癒しがいなくなるかもしれないんだぞ…
俺の愛の言葉できっと聖知ちゃんは…
踏みとどまってくれるに違いない。)」
「(それ…逆効果じゃないっスか…?)
「(ぜってえ…そんなことさせねえからな…
うるせえから黙ってろよ…)
聞き耳を立てていると、いつの間にか森山まで一緒に盗み聞きをしてドアの前にそっと立つ。小声で話していると目の前の体育館の扉が前触れもなく勢いよく開かれた。