第54章 協力者
「っ…涼太っ…まだ時間あるじゃない…」
「早く教室に着いたほうが、勉強少しでもできるじゃないっすか。」
「……勉強って…
まだ日数あるんだし、今無理しなくても…」
黄瀬に手を引かれるがまま教室に着くと予鈴がなるまで15分も時間があり、聖知は不満そうにため息をつく。
そんな聖知の気持ちとは裏腹に、黄瀬はニコニコしながら席に着くと、数学の教科書を取り出す。
「いいから…いいから…
聖知っち…俺…テスト全科目満点取ったら…
ご褒美くれないっすか?」
「…ご褒美…?」
「そっ…俺が学力テスト満点取ったら…
デートしてほしいっす。」
「嫌」
「えっと……
そんな…即座に断られると…傷つくっすよ…」
ご褒美と聞くと聖知は表情を曇らせる。
祝日に入る前に黄瀬はまだ諦めていない事を悟り…嫌な予感がしてデートの誘いを即座に断ると、やる気がなさそうに机に黄瀬がうなだれる。
「…涼太……
前にも言ったけど…私は……
気持ちには応えられない…」
「その台詞…いい加減聞き飽きたっすよ…
俺は…諦めない…
聖知っちが誰と付き合ってても」
「っ……
デートはしないからね。
全科目満点だったらアイス奢ってあげる。」
「そんなんじゃやる気出ないっすよ…
それより…聖知っち…」
「っ……!」
席に座り…勉強を教えるために教科書を取り出すと涼太に肩に手を回され抱き寄せられる。
前は手を握られ…距離感の近い黄瀬に困惑して聖知は慌てて離れる。