第54章 協力者
「聖知ちゃん…
私ね、服のデザインの仕事してるんだけど…
これ実は、新作なの!
きっと聖知ちゃんに似合うから…
着てくれないかしら。」
「Σえっ…そんな……
悪いですっ……いただく理由もありませんし…
お気持ちだけでっ……」
「……そうよね……
私の服なんて着たくないわよね……」
高そうな紙袋に服が1着入っており、申し訳ないと思いやんわり断ると笠松の母親は、わざとらしく傷ついた悲しげな表情を浮かべ取り繕う。
「い…いえ…そうではなくて…」
「私…このデザイン考えるのに3日3晩徹夜して…
着てくれる人がいないなら…
この服…勿体無いけど…捨てるしか……」
「っ…そんな…時間をかけて作ったのに…
捨てちゃダメですっ…!」
笠松の母は思い詰めたような表情を浮かべたように演技を続け…今にもゴミ箱に服を捨てそうな勢いで聖知は思わず止めに入る。
その言葉を待ってましたと言うかのように、ゆっくり沈んだ表情で顔を上げると聖知の両手を握りしめる。
「じゃあ…着てくれる…?
もちろん…今度家に泊まりに来てくれるわよね…?」
「はい、もちろんですっ………え…?」
「やったっ!!約束よ?
今から楽しみだわ…
ちなみにその服ナイトドレスなんだけど…
パジャマ感覚で着れるからまた、感想教えてね?」
「え……あ……はい…
大切にします…
ありがとうございます。」
笠松の母親の様子がコロコロ変わるのをキョトンとした表情を浮かべて見て、紙袋を受け取ると…聖知は嬉しそうに笑顔でお礼を伝える。
「っ…もう可愛いすぎっ!」
笠松の母親は聖知の笑顔を見て見惚れたようにうっとりとした表情を浮かべギュッと抱きしめる。
–––回想終了