第53章 警告※
「聖知…痛みは引いたか?」
「…はい…もう大丈夫です……」
頬の腫れは確かに消えているが…聖知の心は沈みきっており、声に覇気もなく俺と目線を合わせようともしない。
「じゃあ…良いとこ連れてってやる。」
「良いとこ…?」
「ほら…行くぞ。」
俺は聖知の手を握り保健室を出ると部室へと向かう。
聖知の着替えが終わり出てくると一緒に通学路から離れた山間に沿って歩いていく。
「あの…なんか山道になってきましたけど…
どこに……?」
「もうすぐ着く。」
手を引いて歩いていくと陽の光が樹々に差し込み目の前に綺麗な透き通るコバルトブルーの滝壺が目の前に現れた。
「っ…///!
す…すごいっ…水が碧色に…
碧色の滝が流れてますっ…!」
「っ…///
綺麗だろ…ずっと碧色じゃなくて…
この1時間だけにしか見れねえんだ…」
滝壺に着いて聖知はどう反応するか…
心配だったが…その気持ちは杞憂になった。
目を輝かせて嬉しそうに笑っている様子にやっぱり聖知には笑顔が似合う…そう思った。
「…本当に綺麗です。
……ありがとうございます。」
…幸男さん…私が…落ち込んでるから…
連れてきてくれたんですね…」
さっきまで笑顔だった表情がみるみるうちに曇っていき…聖知が悲しそうに笑うと俺はギュッと抱きしめる。
「それもあるが……
俺は……聖知の…笑ってる顔が…
見たい……聖知の…
笑顔が……好きなんだ…//」
今の聖知には人との温もり…
…優しさ…が必要だと思った。
きっと過去の事で清算できてないことはたくさんある。
俺には今すぐ全て無くすことなんてできねえが…
痛みに寄り添い側にいて軽減させることはできる。
時間はかかるが…少しづつ…
一緒に克服できるよう支えていきたい。
「っ…なんか…//
つらい気持ちが少し…和らぎました…」
照れ臭かったが…自分の気持ちを素直に話すと、聖知は嬉しそうに笑い俺にギュッとしがみつく。
俺たちはお互いの温もりを確かめるようにしばらく抱きしめ合っていた。