第10章 スカウト
「わ…悪い…ち…違うぞ…へ…変な意味じゃないからな…いや…変じゃなくて…」
「…笠松さん、ありがとうございます…気遣ってくれて…でも、受験する学校は決めているので…ごめんなさい。」
「………そうか…こればっかりは仕方ねえな…」
私の口からごめんなさいと聞くと笠松さんは寂しそうな表情を浮かべた。
本当は海常を受けるんだけど秘密にしておこう←
涼太も笠松さんもびっくりするだろうな…
そうこうしているうちに電車がきて笠松さんは私を家まで送り届けて帰って行った。
背中がすごく寂しそうだった。
ーー笠松視点ーー
俺は今電車のホームで水瀬と電車を待っている。
まさか水瀬が花宮にあそこまでされてるとは思わなかった…
俺はあの場に偶然居合わせただけで何もできなかった。
花宮はムカつくが何もできなかった自分自身にも腹が立った。
なのに…水瀬は俺にありがとうとか悪かったと謝罪までする。
何もできなかった俺に…
守りたい…離れた場所じゃなくて
もっと近くで…
今まで以上に…
「海常にこないか?」
気がついたら俺は水瀬にそう言って抱きしめていた。
俺は無意識のうちにぎゅっと抱きしめていて情けない話
水瀬が制止するまで気がつかなかった。
「わ…悪い…違うぞ…変な意味じゃないからな…いや…変じゃなくて…」
何言ってんだ…俺…日本語めちゃくちゃじゃねえか…
「……笠松さん、ありがとうございます…気遣ってくれて…でも、受験する学校は決めているので…ごめんなさい。」
気遣う…? 水瀬の目には気遣うように見えてるってことか…
やっぱり今の時期に無理だよな…
俺は水瀬を送り届け家路についた。
水瀬とはそれっきり連絡はしていない。
それから春が来て高校3年になり春となった。
結局水瀬がどこを受験したのか聞かないまま新入生が入学する時期を迎え俺はラインに表示されている水瀬聖知という文字を見つめていた。
ーー笠松視点終了ーー