第53章 警告※
「僕に意見するな。
聖知は黙って僕に従っていればいい。
僕に逆らうことは許さない。
言葉で言ってもわからないのなら…
少しお仕置きが必要かな。」
「っや…っやめて……!」
叩かれた頬がジンジンする。
赤司君の言葉が怖くて身体がうまく動かない。
赤司君の言葉がお祖母様の声と重なる。
赤司君が手を伸ばすと私は後退り…自分の身を守るために膝を抱えて座り込む。
赤司の手が聖知の髪を掴む前に何者かによって弾かれた。
「触るな」
「…………」
怖くて涙が溢れてくる…私にはやっぱり……
抗うことなんて……
「……っ…!」
そう思いかけた時…笠松先輩が隣にいてギュッと私の肩をしっかりと抱き寄せゆっくり立たせる。
守るように背中に私を隠して赤司君と対峙して睨みつける。
「僕のものに気安く触るな。」
「聖知はお前のものじゃねえ!
…お前仮にも婚約者なんだろ…
好きな女に暴力振るってどういうつもりだ。」
笠松先輩は私の顔を見て拳を握りしめ…つらそうに私から顔を逸らす。
「暴力?
僕は聖知に制裁を加えようとしただけだ。
僕に逆らわないように…
押し込まないといけないだろう?
これは聖知のためにやっていることだ。
部外者は口を出すな。」
「部外者じゃねえよ…聖知は…俺のものだ。
お前はフラれてただろ…
…暴力で人を支配なんかできねえ…
聖知を力で押さえつけても…心までは…
支配なんかできねえ。」
お互いに睨み合い沈黙が流れる。
その沈黙を最初に破ったのは笠松先輩だった。
「聖知…もう行くぞ。」
「………」
「聖知」
「僕は婚約破棄は絶対に受け入れない。
君はいずれ僕のものになる。
猶予をあげよう…
転入の話は改めて1ヶ月後に返事を聞くとしよう。
次会える時を楽しみにしてるよ。」
「……………」
その場から笠松先輩が私の手を引いて去ろうとすると赤司君が私を呼び止める。
ゆっくり顔を上げると、狂気じみた表情をしている赤司君と目が合う。笠松先輩に手を引かれるまま赤司君を残して笠松先輩は体育館には通らず保健室へと向かった。