第52章 婚約者
––––同日 20;00 洛山高校 バスケ部 部室––––
「あら、征ちゃん…まだ残ってたの?」
「玲央か…これ書いたらすぐ帰る。」
「明日は海常との練習試合だからほどほどにね?
…ちょうどよかったわ…
明日の練習試合で聞きたいことがあるんだけど…」
「なんだ…?」
実渕は自主練習を終えてロッカーに向かおうとすると部室の明かりが点いているのに気づく。制服姿の赤司が部誌を書いている途中でそのまま出て行こうとしたが足を止め、明日の練習試合で気になったことがあり…疑問を投げかける。
「なぜ海常と練習試合を組んだの?
それもわざわざ県外の学校に…
調整なら都内にいくらでも相手はいるんじゃない?」
「そのことか…
確かにそうだな…理由を挙げるならば…
海常はIHで戦う可能性のある強豪校だ。
現在の実力を見ておきたかった…
というのが1つの理由だ。」
「まだ…何か理由があるの?」
「海常には僕の婚約者がいる。」
「征ちゃんっ…婚約者がいたの!?」
「あぁ…ここから先はお前たちにも関係あることだ。
彼女は海常ではバスケ部のマネージャをしている。
だが、彼女には洛山へ近いうちに転校…
そして、バスケ部のマネージャーをしてもらう。
だから…明日の練習試合では、各自挨拶ぐらいは…
しておいてほしい。」
「了解!わかったわ…
永吉や小太郎には私から伝えておくわね。
どんな女の子か楽しみにしてるわ!」
実渕はそう言うと部室から出ていき赤司1人になる。
「楽しみか……中学時代の彼女であったならば…
僕も楽しみだったが……
少々……警告を与えなくてはいけないね…
聖知……」
氷のような冷たい表情を浮かべ…部誌の下にある調査報告書の書類を取り出す。その写真には聖知と笠松と手を繋いでいる姿が写されていた。