第52章 婚約者
「私は……断るつもりです。
赤司君には、恋愛感情はありませんから…」
「っ……そ…そうか……」
笠松は息を飲み聖知からの返答を聞くと拳に力を入れていた手を緩めひょうしには出さずに安堵する。
「それに、母が「絶対に破談にする」
…って言ってましたから…大丈夫だとは…
思うんですけど……ただ……」
「……ただ…?」
「嫌な予感がして……
赤司君がこの時期に練習試合に来るのは…
何か…行動を移そうとしてるんじゃないかと…
単に練習試合だけなら…それでいいんですけど…」
笠松は聖知の思い過ごし、心配しすぎではないかと考えたが聖知のアメリカでの生活、何より聖知が思い詰めた表情を見ると現実味をおびている感じる。
「……大丈夫だ…
…本当に赤司が何かするつもりでも…
俺はもう聖知とは2度と別れねえ。
っ…こ…こっ…この意味……わかるか?」
「…2度と…別れないってことですか?」
笠松は勇気を振り絞って聖知に未来を見据えて付き合っていることを伝えようとするが上手く聖知には伝わらず歯痒さを感じる
なんとか…聖知に伝えたくても…ストレートに伝えるには恥ずかしく言葉を続ける。
「そうじゃなくて……
だから…聖知とは2度と別れねえから…
他の誰かと…付き合うことも…ねえだろ……」
「………?
あの…よくわからないんですけど……
……他にも……
…気になる子がいるってことですか……?」
っ……なんでそうなるんだよ……っ…
ここまで言えばわかるだろっ……
鈍感すぎにも程がある
俺は、聖知の言葉に盛大にため息をつくとギュッと聖知を抱きしめる。