第52章 婚約者
「聖知…疲れただろ?
悪いな…母さんも弟も…
ベタベタして…」
「そんな事ないです。
るみさんも幸大君、幸也君もとっても素敵です。
何より幸男さんが優しいお兄ちゃんっていう…
違う一面が見れたので…楽しかったです。」
「そ…そうか…///
俺も…っ…見たいもんは見れたし…///
あ…そうだ…今日監督から連絡があっただろ…?」
帰り道、笠松は1日気を使わせたと思い聖知に軽く謝ると「楽しかった」と聞き安堵する。
聖知のエプロン姿を思い出したように顔を赤らめ…ふと監督からの電話の話をしていなかったことを思い出すと…ブンブンッと首を横に振り部活モードに切り替える。
「ぁ…そういえば…急ぎの用件でしたか…?」
「あぁ…明日、部活あるだろ?
昼から練習試合をすることになった。」
「急に決まったんですか?」
「あぁ…今日、練習試合をしたいって…
連絡があったみたいだ。
まぁ…強豪校だったから…
二つ返事でOKしたみたいだけどな…」
「じゃあ…午前中は練習試合に向けて…
調整になりますね…ちなみに…
どこの学校ですか?」
「洛山だ。」
「ら… 洛山……」
それを聞いた瞬間––––
私は、お母さんから聞いた婚約の話を思い出した。
ただの練習試合……のはずなのに……
なぜか……不安が募る……
それは…私の知っている赤司君は……
彼は意味のない行動なんかしない…
そう…知っているから……
聖知は、母である澄香が「婚約話を揉み消す」と言った言葉を信じていたが、帰国してから2週間しか経っていない…
練習試合の目的は偵察のためなのか…婚約話の件できたのか…わからないまま不安になり足を止める。