第51章 笠松家の夕食
「エプロン姿が見たい…ねぇ……
幸男ったら…もう気が早っ…」
「っ…そ…そんなんじゃねえっ!
俺は、似合うと思ったからっ…言っただけだっ!」
「あら、そうなの?
私はてっきり…
聖知ちゃんにエプロン姿で…
「お帰りなさい」とか「ご飯できてます」とか…
言って欲しいのかと、思ったわ…」
「っ…!!」
「……?
どういうことですか?」
笠松の母親は自分の息子が何を考えているのか手に取るようにわかり…笠松が思っていることを口にすると、核心をつかれて顔が真っ赤になる。
当の聖知はなぜ笠松がそう言って欲しいのか分からず首を傾げていると笠松の母親はうるうるした瞳で聖知を見つめる。
「はぁ…純真無垢な彼女が…何も知らないと思って…
聖知ちゃん…幸男に変なことされたら…
すぐに言いなさい…私がぶっ飛ばしてあげるから。」
「……へ…?」
「なっ…何もやましいことなんかねーよっ!」
「それはそれとして…
じゃあ今から…料理を作りましょ?
エプロン持ってきてくれる?」
「あ、はい!」
笠松の母親の言葉の意味がわからずにいながらも…エプロンを持ってくると、笠松の母親はカーテンを閉めてキッチンの様子がわからないように隠す。
「な…何で…隠すんだよっ…!」
「今からキッチンは男子禁制よっ…
幸也たちの事よろしくね?」
「っ…なっ…!」
そう言うと笠松の母親は問答無用で手を振ってカーテンを締める。