第51章 笠松家の夕食
「いいのよっ…私が招いたんだから…
聖知ちゃんはゆっくりしてて?」
「で、でも…お1人じゃ大変だと思いますし…
お手伝いさせてくださいっ…」
「っ…まぁ…聖知ちゃんっ!
わかってくれるのねっ…!
そうよね…予行練習にもなるし……
手伝ってもらえるかしら…?」
「……予行練習…?」
「っ…おい…
聖知にあんま…変な事言うなよっ…」
「1人じゃ大変」と聞くと笠松の母親は共感してくれた聖知の手を握り締める。
夫、食べ盛りの高校生、3歳児のご飯作りと働きながらの家事が大変だと言うことに共感してくれて嬉しくなる。
聖知が自分の息子と結婚したら一緒にご飯を作ることにもなる…そんな思いを聖知に伝えると…笠松に横から口を出されてムスッとする。
「女同士の会話に入ってくるなんて…
デリカシーがないわよ幸男っ…
そうだわ…まずエプロンが必要よね!」
「あ…それなら…持ってきてますので…」
「まぁ……わざわざ準備してきてくれたの?
悪いことしたわね…」
「いえ…ちょうど買ったばかりだったので…
お気になさらないでください。」
買ったばかり…?
ふと笠松の母親が疑問を抱く。
元々料理を作るために買ってくれたと言うこと…?
普段から聖知ちゃんは…
エプロンをつける習慣があって…
新しく買ったばかりということかしら…
「……?
聖知ちゃんは普段からエプロンをつけるの?」
「いえ…これは…笠松先輩が……」
「聖知っ…!」
「……あ…なんでも…ありま…」
「聖知ちゃん…?
幸男に…何を言われたの…?」
「べ…別に…なんでもいいだろっ…!」
笠松の母親は聖知の言葉を聞き漏らさず何かを察すると聖知の両肩に手を置いてニコッと微笑み話すよう圧力をかけられる。
笠松の抗議も虚しく消え…聖知も圧力に負けてエプロンを買うきっかけを話してしまった。