第50章 動物園
「そういえば…
なんであの2人が迷子だって気づいたんだ?」
「待ってたら、泣き声が聞こえてきたんです。
お母さんに会いたいって泣いてるのを見てたら…
なんだか……ほっとけなくて…
早くお母さんと会わせてあげたくて…
置いて行ってびっくりしましたよね…?」
かつての自分……
泣いても喚いても……父も母も側にいなかった
それは次第に感覚が麻痺して…
何も考える事を止めてしまう
聖知の悲しそうな表情から笠松は汲み取ると、何かを察して聖知の頭を撫でる。
「……聖知…
ありがとな……
いきなりいなくなって…びっくりはしたが…
まさか動物園で鉢合わせすると思わなかった。
それに……」
「………?」
頭を撫でたまま笠松は照れくさそうに視線を逸らしながら頬をポリポリと搔きながら続けて聖知に伝える。
「……あんまり…//
…幸大と幸男を…甘やかすなよ……
いくら子供でも…くっつきすぎだ……//
距離感が……必要……って…何笑ってんだよ…」
「…幸男さんっ…妬いてるんですか?」
まだ小さい子供なんですから…」
笠松が照れながらゴニョゴニョ言葉が詰まったように話すと聖知はクスクスと楽しそうに笑いだす。
嫉妬してくれて嬉しい気持ちと子供相手に嫉妬してしまう笠松を内心可愛いと思い笑ってしまったことで、笠松の嫉妬心にさらに火をつけることになるとはこの時聖知は知る由もなかった。