第50章 動物園
「「ダメっ!」」
「まだお姉ちゃんと一緒がいいっ!」
「行っちゃやだっ!」
「……っ………」
「……こら…お前ら…
いい加減我儘言ってんじゃねえっ…」
「っ…うぅ……」
「ぃゃだっ……」
笠松先輩が幸也君と幸大君を叱りつけると2人は離すまいと私にしがみついたまま目に涙を溜めて泣くのを我慢している。
そんな幸也君と幸大君を見ていると笠松先輩のお母様まで元気がないような表情を浮かべて心配になる。
「聖知ちゃん……
私ね…家に帰っても…すごく寂しいの……
だって……家で女は私だけでしょ…
聖知ちゃんみたいな女の子と…
話がしたくて……聞いてほしくて…」
「………っ…」
「でも…仕方…ないわよね…
用事があるんだもの……
我儘言ってはダメ…よね…
また…いつか……
遊びに来てくれると…嬉しい……」
「っ……私でよければ…いつでもお話し聞きますっ…
ですから…そんな…
悲しい顔なさらないでください…」
悲しい顔をしている笠松先輩のお母様に心痛め寄り添うように伝えると正気のない表情で私を見上げる。
「……本当に……?
じゃあ…今日一緒に夕食…食べてくれる…?」
「もちろんですっ………え……?」
「っやったぁっ!!
約束よっ!…良かったわね…幸也、幸大!
お姉ちゃん今日、家に来てくれるって!」
「「わーい!!今日はずっと一緒!!」」
「…………え…?」
さっきまで沈んでたのが嘘のように笠松先輩のお母様は太陽のような眩しい笑顔でガッツポーズを取る。
笠松先輩は今の状況に頭を抱えてため息をつき…私は状況がわからなく…ついていけず呆然としていた。