第50章 動物園
「お姉ちゃんっ…ありがとう…」
「まだっ…いかないでっ…!」
幸大君と幸也君は後ろから服にしがみついて離れようとせずその様子を見て2人の母親らしき女性が近づく。
「…この子たちが…迷惑かけたそうで…
本当にありがとう…なんてお礼を言っていいか…」
「いえ…とんでもないです…
お礼だなんて…当然のことをしただけなので…
無事お会いできてよかったです。」
「……まぁ…礼儀正しいお嬢さんね…
よかったら…お礼もかねてお昼ご一緒にどうかしら…
この子たちも…すっかり…というか…
懐いてしまっている様で…」
母親はセミロングの黒髪の女性で…なんだか…誰かに似ている気がしたが…特に会ったこともなく、気のせいかと感じ…考えるのをやめた。
後ろから「絶対離さない」と言う視線が幸也君と幸大君から送られてきて服をギュッと握りしめたまま離そうとしない様子が伺える。
でも、笠松先輩が待っているかもしれないと思いやんわり断ろうと口を開こうとした瞬間–––––
「聖知…いきなりいなくなってびっくり………」
「っ…!?
幸男っ…貴方ここで何してるの……」
「………?
幸男さん…お知り合いですか?」
「っ…な…な…なんでここにいるんだよっ!」
「あっ!兄ちゃんだ!」
「ほんとだ!兄ちゃんも来てたんだ!」
「………兄ちゃん……ってことは……」
「っ…俺の……母親と弟だ……」
笠松先輩と女性のやりとりを見て「兄ちゃん」と聞くと…幸大君と幸也君をよく見たらどことなく笠松先輩に似ている…
「幸男…説明してもらえるわよね…?」
女性は笠松先輩の様子を見て有無を言わさずニコッと微笑み私たちは近くのお店へと一緒に入店した。