第50章 動物園
「奥には…ウォーキングサファリがあるんだ…
ワラビーとダチョウとカピパラが放し飼い…」
「っ……おかあ…っ…さあん…っ…!」
「っ…なくなっ…!…っ……
ないてもっ…おかあ…さっ…っ…」
私は近くのベンチで、笠松先輩が戻ってくるのを待っていた。その間にまだ周っていないエリアのパンフレットを見て1人幸せな気分に浸っていると近くで子供の泣く声が聞こえる。
どこで泣いてるんだろうと思い…辺りを見渡すと、私が座っているベンチの反対側で男の子2人がグスグス泣いているのを見た。
「ゆきやがっ…悪いんだぞっ…っ…
お前がっ…っ…キリン見たいって…」
「こうただって…っ…行くって…っ…
行ったっ…じゃんっ……」
「っ……おかあっ……さん…
どこっ……だよ…っ…」
「…っ…おかあっ…さん…
あいたいっ…よっ…っ…」
「…………」
グスグス泣いていた男の子2人は嗚咽交じりに本格的に泣き出し…私は、かつての自分を見ているようで…ほっとけなくてそっと男の子2人に近づいた。
「どうしたの…?
そんなに泣いて…お母さんとはぐれたの…?」
警戒されないように2人の前に来ると屈んでニコッと微笑みハンカチを男の子2人に渡す。
「おかあっ…さっ…いないっ…」
「っ……どこっ…いないっ…っ…」
「大丈夫…お姉ちゃんが一緒に探してあげる…
お母さんもきっと…心配して探してるから…
すぐ見つかるよ…
泣いてたらお母さんに笑われちゃうよ?」
嗚咽交じりに泣いていて状況がわからなかったが…まずは安心させるほうが先だと思い…2人の頭を優しく撫でて優しく微笑むと泣きじゃくっていた2人の涙がだんだん止まっていき安堵する。
「さて…とりあえず…園内のインフォメーションに行って見よっか…そこでお母さんを探してもらおう?」
「っうん!…お姉ちゃん…ありがとう」
「もう泣かないっ!」
2人は泣き止むと、たちまち元気になった。
笠松先輩が戻って来そうになく…早くお母さんと会わせてあげたくて…LINEで「迷子の男の子がいたのでインフォメーションに行ってきます。」とメッセージを送り男の子2人と手を繋いで園内を歩いていく。